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2020

12.27

フィラリアの通年予防について

今年も残すところあと数日、コロナの再拡大もあり気忙しい日々かと思います。

当院でも先日大掃除を行いました。もうすぐ開院10ヶ月、流石に普段目の届かないところに埃が溜まったりしていました。

「きれいな病院」といっていただくことも多いですが、「新しいから」じゃなく維持できるよう、コロナ感染対策と共に飼い主様が安心してご来院いただけるよう気をつけていきます。

 

 

通年のフィラリア予防のご案内

近年地球温暖化の影響で蚊の発生期間が延びている、マンションや下水施設などでは冬にも蚊がいる、投薬エラーで感染してしまう、などの理由から米国糸状虫学会が通年予防を推奨しています。

 

◯通年予防のメリット

予防の確実性UP!:「ほぼ」確実から「より」確実な予防に変わる

待ち時間の回避:1月~3月に開始したら、病院の混む4~6月にご来院いただかなくて済む

コストとストレス軽減:相談の上その年のフィラリア検査が不要(詳細は診察の中で説明します)

 

◯通年予防のデメリット

コストが上がる:期間予防より多くお薬が必要(注射での予防は少し安価です、まとめ買い割引もあります)

同時に春の狂犬病ができない:1~3月はまだ新年度の接種時期ではない

 

◯注射でフィラリア予防

1回の注射で1年間予防できるお薬があり、予防の手間や飲み忘れの心配から開放されます。

デメリットとしては、ごくまれに発熱、顔が腫れる、アナフィラキシーショックといった副作用が報告されています。

以前のフィラリア注射は副作用も多く私は避けていましたが、新しい製品はワクチンよりもずっと副作用の発生は少ないようで、すでに日本で数十万頭のわんちゃんが使っています。

なお、成長期、妊娠中、初回投与が10歳以上、以前お薬でアレルギー反応を起こしたことがある、重い持病があるといったわんちゃんではお勧めしません。

また予防コストは内服を通年投与した場合よりも安くなります。

 

◯予防割引について

フィラリア予防薬やノミ・マダニ予防薬を7ヶ月分以上まとめ買いされる場合10%割引

昨年当院で予防されたわんちゃんはフィラリアの検査費用500円引き

健康診断血液検査(生化学11項目以上)を同時に実施でフィラリアの検査費用1000円引き

 

当院にかかられたことのあるわんちゃんの飼い主様には、1月から順次このご案内のDMを送らせていただきます。

これまでどおり5~12月の期間予防でも十分な予防効果はありますが、この機会に通年投与をご検討いただければと思います。

 

 

 

そもそも。。。

フィアリア予防について

◯フィラリア(犬糸状虫)とは?

フィラリア症は、蚊を介してわんちゃんの心臓や肺動脈に寄生する寄生虫が起こす病気です。稀ですがねこちゃんもかかります。フィラリアは成虫になると30cm にもなる糸状の寄生虫です。
フィラリアが寄生することで血液の流れが悪くなり、様々な障害が出現します。放置すれば死に至ることもある重大な病気です。

感染のメカニズム

参考(https://n-d-f.com/filaria/)

 

◯予防の方法は?

基本的に蚊に刺されて幼虫が入ってくることは止められません。成虫になる前にお薬で退治することで、成虫が体を蝕むことを予防します。

一般的には毎月の内服薬で行うことが多いです。錠剤タイプ、チュアブル(おやつ)タイプがあり、効果としてもノミ・マダニやお腹の虫なども一緒に退治してくれるお薬もあります。

最近は注射で1年効くタイプも、以前の製品よりかなり副作用が少なくなり利用しやすくなりました。

首の後に垂らすスポットタイプでの予防を行う場合もあります。

 

◯いつ予防したほうがいいの?

5~12月に予防を行うことが一般的です。

私もこの期間予防することで『ほぼ』確実に予防できるものと考えています。

以前も書きましたが、この期間はHDU(Heartworm Development heat Unit)という、地域の平均気温から算出される、フィラリア予防必須期間です。

この期間が始まったら予防を始め、期間が終わった翌月に最終投薬をすることが必要です。

図1 HDUを用いた各地における2018年の犬糸状虫感染開始日・終了日および近年(2002~2017年)の犬糸状虫感染開始・終了の最早日と最遅日期間

少し前のデータですが見やすいサイトはこちらです。(https://filaria.jp/html/hdu/kyusyu/index.html#fukuoka)

 

◯毎年の検査必要なの?

フィラリア予防は毎年シーズン最初の投薬前に検査を行います。

結論から言うと当然必要な検査で、全てのフィラリア予防薬の添付文書にも事前検査の必要性が記入されています。

万が一陽性のわんちゃんに飲ませることで起きうるショックを避けるためです。

フィラリア予防はきちんと投薬していれば『ほぼ』確実です。しかし投薬していたのに感染してしまった報告はあり、次のような理由が示唆されています。

・投薬後に吐いてしまった

・投薬時に入っている子虫がまだ薬が効く期間になってない

・何らかの理由で必要な血中濃度まで上がらなかった  etc…

当院では期間予防のわんちゃん全てに検査の実施を行っています。

通年予防している場合はこのリスクはかなり低いものと考えられ、詳細をお話した上で検査を行うか相談します。

 

◯猫のフィラリア症

近年ねこちゃんにもフィラリアが感染して、身体に問題を起こすことがわかってきました。

ねこちゃんの場合は主に肺に障害を起こします。ところが、寄生する虫の数が少ないため診断が難しく、咳、呼吸困難、嘔吐などの症状が出てきた時は生命が危険な状態です。健康そうにみえても突然死亡することもあります。

今のところ猫の治療法は確立されておらず、最善の方法は事前の予防です。

首の後に垂らすノミ・マダニ予防とセットのスポットタイプで行います。

外に出る子はもちろん、室内でも蚊に刺されることはありますので、ねこちゃんのフィラリア予防もお勧めします。