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2020

3.13

猫の子宮蓄膿症

早いもので、開院して9日目となりました。

地域の飼い主様から「開院を待っていました」との嬉しいお言葉もいただきながら、診察と病院のシステムを調整する日々です。

 

そんな中、先日は少し珍しい病気の緊急手術でした。

『子宮蓄膿症』

女の子のわんちゃんとともに暮らしている方はご存知かもしれませんが、中~高齢の未避妊の犬にしばしば見られる性ホルモン関連性の疾患です。

性ホルモンの影響で子宮内膜が腫れ、子宮内に多量の膿(多くは大腸菌など)を溜めてしまう、状況によっては致死的な疾患です。

避妊手術を受けている場合は発症しません。

 

しかし今回認められたのは、『ねこちゃんの』子宮蓄膿症でした。

これまでたくさんの子宮蓄膿症の手術を行ってきましたが、ねこちゃんは4例目。ちょっと珍しいのです。

 

夕方に最近元気食欲がなく、今日陰部から液体が出たとのことでした。

明らかに腹部が張っていて、外にも出ないから妊娠の可能性もなく、一般身体検査のあとに直ちに超音波検査で診断となりました。

子宮内はやや混濁した大量の液体貯留が検出され、パンパンに張った状態。血液検査でも白血球が正常の5倍まで跳ね上がり、発熱も見られています。

幸い腎機能や血液成分に大きな異常は見られません。

 

飼い主様との相談の結果、破裂リスクも考え直ちに緊急手術となりました。

術前に点滴や抗生物質、鎮痛薬の処置を行い、診察終了後直ちに麻酔導入、手術を行いました。

麻酔導入、手術、麻酔の覚醒までの時間は大きく動物に負担をかけるため、今回のような病気の子にとってはとても重要。

 

こういう症例のために開院に際して導入したのが、『コヴィディエン ForceTriadエネルギープラットフォーム』及び『ベッセルシーリングシステム LigaSure』です。

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ざっくり言うと「素早く確実に血を止めて、切開する機械」です。

僕は観ていませんでしたが、「私、失敗しないので」の人の手術室にも置かれていたそうです。

この機械は「あなた、失敗させませんので」みたいなものです。

他にも腫瘍外科などで高性能の電気メスとしても大活躍してくれますが、それについてはまたいつか投稿いたします。

 

経験豊富なスタッフや設備のおかげで、麻酔導入後30分以内に覚醒に至り、翌日にはご飯も食べて退院となりました。

にゃんこの変化に敏感に気付けた飼い主様、手術という大きな侵襲に耐えてくれたねこちゃん、スタッフ、医療機器、外科技術など、多くの要素が噛み合わなければ命に関わることだってあった状況でした。

 

子宮蓄膿症は、避妊手術で予防できます。

避妊手術には他にも、乳腺腫瘍や子宮卵巣の腫瘍、発情ストレスからの開放などのメリットがあります。

麻酔や手術リスク、コスト、倫理的感情的な側面、太りやすいなど、避妊手術を否定できる要素もたくさんあります。

診察の中でも、多くの飼い主様を悩ませてしまうこともしばしばです。

ただ、病気と向き合う日々に身を置く僕は、「うちの子なら必ずやる」と考えています。

 

避妊・去勢手術については、また別の機会に投稿しようと思います。